旅の途中

TALLINN #10 


LEICA M9-P / SUMMILUX-M 35mm ASPH
どう見てもここは危険地帯だ。この先に足を踏み入れるべきかどうか、ちょっと考えたが、こんなところで怖気づいて引き返したのでは、せっかくの旅の思い出に怯懦の後味が残ると思い、敢えて進んでいくことにした。



LEICA M9-P / SUMMILUX-M 35mm ASPH
果して、この廃屋から更に進んだところに革ジャンを着た男が佇んでいた。カミソリのように鋭い目をして睨みつけてくる。年の頃は三十前後、顔はロシア系だが、地元民か旅行者か、ちょっと見分けがつかない。他に徒党を組んでいる奴はいないようだ。街灯の陰になったところに女がしゃがみ込んでいる。男が敵意をむき出しにしてこちらを睨むのは、まずいところを見られたからか、それとも女を守ろうとする気持ちからなのか。いずれにせよ本当に強い奴は目に力が入らない。肩肘張って睨みつけてくるような奴ならそんなに気にする必要はないだろう。そう思って真っ直ぐ歩いて行くことにした。ぼくの右手にはハンドストラップに吊るした M9-P がぶらぶらしている。もし男が襲ってきたら、この金属の塊りで相手の頭を叩きつけることになるのかなぁ、でもそれだったら強奪されるのと同じくらい高くつくなぁ、なんて思いながら男の前を通り過ぎた。通り過ぎ様にチラッと横目で見ると、相変わらずカミソリのような目をしているが、最初に目が合ったときのような険悪さはなかった。こちらに敵意のないことが分かったのだろう。



LEICA M9-P / SUMMILUX-M 35mm ASPH
無事に危険地帯を脱し、幾つかの路地を通り抜けて再び夜空に輝く聖オレフ教会が見えたときは、ホッとして、思わず安堵のため息が漏れた。冷静でいたつもりだったが、やはり自分も相当緊張していたのだろう。この程度のことは屁とも思わなかったはずなのに、やれやれ、年は取りたくないもんだなぁ.....