旅の途中

木札と風 


LEICA M-E / SUMMILUX-M 35mm 球面
5月5日の昼頃、ぼくは札幌護国神社にいた。そのとき、妙なことがあった。



突風が吹いて、木札が1枚、落ちたのである。拾い上げて元の場所に戻した。下段中央の蒼い札である。ところが再び突風が吹いて、同じ札が落ちた。他の札も風に煽られてカランカランと音を立てていたが、落ちることはなかった。どうしてこの木札だけ落ちるのか、それが気になって 30 分ほどこの場に留まり、観察を続けた。



実をいうと、なかなか珍しい状況であるから、木札が宙を舞って落ちる瞬間を撮ってみたいという俗人的な狙いがあったことも正直に打ち明けねばなるまい。ぼくはカメラを構えたまま、じっとそのときを待っていた。ところが、撮ろうとすると風が吹かない。まったく吹かない。家内もすっかり退屈しきっているし、諦めて引き上げようとする。すると突然、こちらの気持ちが切れたのを見透かすように風が吹き、ハッと振り向いたときにはカラーンと音を立ててまた同じ木札が落ちている。そんなことが2度もあった。結局自分が撮れたのは、件の木札がほんのちょっと浮き上がったところだけだった。加藤茶の「ちょっとだけよ」である。風の意地悪め。