旅の途中

ベルン 午前5時 


少し前から雨が降り出したが、傘を持って出なかったことを別に後悔はしなかった。 静かに、幽かに、厳かにけぶるベルンの街。
こんな情景を見ることができて、本当に幸せだった。







過日、窓を開け放してどんちゃん騒ぎをやっていたロシア人達も今日は静かに眠っているようだ。 望んでいた静寂がここにある。
それなのに、今はアーレ川のせせらぎが切なく心に響いている。




あと数時間でこの街を発たねばならない。 そう思うと、どうにも.....  路地という路地を歩き回らずにはいられなかった。




この本屋では欲しい写真集が何冊かあったが、あとで買おうと思っているうちに、とうとう機会を逸してしまった。それだけが心残り。




誰がこの本を置いていったのか。 酔客か、伝道師か。 酔客ならばそこには発作的な愛の心があり、後者であれば悪魔のワナが仕組まれているに違いあるまい。白黒どちらか、中を見てはっきりさせたい誘惑に駆られたが、寸でのところで思い留まった。




午前6時、いつの間にか雨は止み、東の空が明るんできた。 雨はまだ止まずとも良いし、夜も明けなくて良いのにと思った。




このベンチに座って最初の夜明けを迎えたのだったね。 わずか数日前のことなのに、胸に迫り来るほど思い出は深く.....




冬のベルンはどんなだろう.....
静かに雪の降り積もるベルンを見てみたいと思った。

LEICA M9-P / SUMMILUX-M 35mm ASPH / GITZO Traveler Tripod