旅の途中

ベルガモの至宝 後記 


LEICA M9-P / UWH 12mm F5.6 / コッレオーニ礼拝堂 / ベルガモ
この写真は以前「ベルガモの至宝」の一部として掲載したものだが、当時はエントリー全体の色調統一を図る必要性からホワイトバランスをかなり調整し、他の写真に合わせる形でアップした。しかし、この1枚に関して言えば、M9-P が捉えた色はまったく違うものであり、そのことがずっと気になっていた。というのも、しばしば夢に出てくるこの映像はいつも決まってオリジナルの色、つまり今日ここに示す蒼ざめた色で始まり、蒼はやがて灰に変じ、最後にはとうとう突き抜けて行ってしまうからである。








礼拝堂の中央に立ち、首も折れんばかりに仰向いてカメラを構えたとき、ぼくはそこに宇宙を見て.....。それは間違いなく宇宙であり、同時にまた人間二千年の歴史を瞬時に見るようでもあった。呆然としてシャッターも切りえず、ああ、なんということだ。体が?魂が?すぅ~っと吸い上げられていき..... 吸い込まれて自分が消えてしまいそうだった。ぼくは慌ててファインダーから目を離して下を向いた。自分にこれは撮れない。絶対に撮れない。そう悟った。その場で少し考えて、セルフタイマーにセットした M9-P を仰向けにして床に置いた。それからすぐに身を遠ざけ、祈るような気持ちで秒刻が過ぎると、コトンッ.... と小さく囁鳴してシャッターが切れた。この写真は自分が撮ったのではなくて M9-P が撮ってくれたものである。きっと死ぬまで忘れない1枚。